エグい不動産商売がバブル末期のかほり963号

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      エグい不動産商売がバブル末期のかほり963号

■おトクな投資物件ありまっせ

 けっこう不動産オタクでありましてね、私。
 基本的に、子供の頃から、間取り図を見たり、物件を見たりするのが好きだったんだけど、平成バブルあたりからちまちまと実際に取引したりしてる。
 私の不動産取引のモットーは「100に99は見送る」「機会損失上等」「あせらない」「向こうからの話は基本的にすべて断る」「キャピタルゲインは狙わない」「カネは(ほぼ)借りない」「チキンたれ」と、要するに、ほとんど何もしない(笑)。
 よほど有利な条件でもない限り買わない、が、基本だ。しかもこちらで「これは?」と見つけたものオンリー。
 と、そういうワタシクであるのだけど、それでも気が向くと「こんなおトクな物件がありますよ」というアヤシい話を聞くことがある。見聞を広めるためだ。
 たいていは若い営業マンで、こう言っちゃナンだが、だましの手口がスケスケで面白い。
 ちょっと前「一棟買いのマンションを買いませんか」という話があった。

■竹の塚の「デザイナーズマンション」

 喫茶店で会ってみると、予想通り若い営業マン。
 新築木造2階建て、ワンルーム(ロフト付き)×10戸、足立区竹の塚駅徒歩12分、約1億2000万円。
 マンションというより、レオパレスみたいな木造モルタル2階建てアパートだ。外観がちょっと今風というだけ。
「表面利回り8%です、将来の年金がわりにどうです。ヒキタさんの場合フルローンでいけます。サブリースもOKです」という。
 スゴい資料を持ってきたんで「どれどれ、見せてみ?」と目を通す。
 いやはや初歩的な物件だ。
 ダメ物件、いや、ほぼサギ物件として(笑)。
 そもそも「新築ワンルーム投資」ってやつほどバカバカしい無駄遣いはないんだけど、それが×10でやってきたという感じだ。収益のシートを見ても、いやはや甘いのなんの(笑)。

■ファンタジーの上にファンタジー

「ねえ、これ、家賃9.2万円って書いてあるけど、根拠はなんだろう(笑)? 本気でこの家賃で貸せると思ってるの?」
「ええ、人気のロフト付きですし、デザイナーズマンションですから!」
 彼はそう答える。
「いやね(苦笑)、竹の塚駅から徒歩10分以上って、ワンルームは普通5万円台だよ。9万台で貸せるわけないでしょう(笑)。これで貸すなんて一種のファンタジーだよ。そのファンタジーを土台に利回り8%って、甘い、というより、破綻超特急という感じだよねぇ(笑)」
 私はスマホで似たような地元物件の相場を見せていう。スマホの登場で不動産営業もやりにくくなったろうなぁ。
「ええー、でも、デザイナーズですし…」

■こんなところがこの価格

「デザイナーズマンションなんて『ちょっと派手で使いにくい形の物件』というだけでしょう。古びるのも早いよー、この手のデザインは。だって、キミだったらこれ9万で借りる?」
「……ええ、借ります。おしゃれです」
 まだ言ってる。
「5年後も? 10年後も? これ、資料見ると、10年後の賃料も新築時と同じ設定じゃない。これ、どうしたって無理あるよね」
 ……黙ってしまった。
「これねー、グーグルマップでまわり見ても倉庫ばっかりだし、駅も遠いし、コンビニはあるけど基本的に不便なところだよね。敷地だって140平米の土地にギリギリ建てたって感じでしょ。高いよなぁ。これに1億2000万円出す人、いるかね(笑)。キミね、たぶん上司にこの額で強気にいけ!とか言われたんだろうけど、ちょっと強気すぎだよね」
「はぁ。でも節税にもなりますし…」 
 わはは、常套句。
「それも上司の請け売りでしょ。あのね、節税ってのは、赤字分を本業に食い込ませるから税金が減るってことなのよ。それって基本的に本末転倒だと思わない?」

■バブル末期の風景

 ……でも、懐かしいな、この会話。
 バブルが崩壊した直後、たしかにこんな会話をしていた。私もまだ若かった。その中で小さな失敗を何度かした。だから今がある。30年ずっと細々とやってきた不動産取引は、結局かなりのプラスになった。でも、それは色々経験を積み、勉強しつつ、チキンに徹し、下手な話に飛びつかない体質を手に入れたからだ。
 投資は常に臆病に臆病に…。さらに臆病に。もひとつ臆病に。
 叩いて叩いて結局渡らなかった石橋もたくさんある。

 なぜいきなりこんな話をするかというと、なんかね、最近、YouTubeなんかで若い人たちが言う「マンション投資、ビットコイン投資、株投資でファイアー!」「タネ銭100万円で億り人!」みたいなのを見たりすることが多いからなのよ。
 そういうのを見るたびに思うのです。
 おそらく彼らは相場が上がり続けたこの10年、という状況しか知らない。知らないからまだ上がる、まだイケると思ってる。
 でも、本当に落ちるときは落ちるんだ。底なしに。
 そして、その崖っぷちは、今まさに目の前にある。

 崖の向こうは緩やかなスロープか、それとも断崖絶壁か。さてどっちだと思います?


【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】

『一流の頭脳』アンダース・ハンセン著 サンマーク出版

 アタマをよくするにはどうすればいいか、という本。
 意外な導入とエピソードに最初からぐいぐい引き込まれるが、結局本書が言ってるのはなにか。その驚くべき結論は「はじめに」3ページにこう書いてある。

 腕を鍛えたければ脚ではなく腕のトレーニングをするのだから、脳も同じはず。
 私たちはそう考えて、クロスワードパズルや記憶力のトレーニング、さまざまな脳トレメソッドで頭を鍛えようとする。しかし結論から言えば、効果はあまり期待できない。
 脳の機能を高めるには戦略的に運動するほうが、パズルや脳トレよりはるかに効果があることを、研究成果がハッキリと証明している。驚いたことに、脳は頭を働かせようとするより、身体を動かすことでこそ威力を発揮する器官らしいのだ。

 要するに「脳を鍛えたければ運動しろ!」というこっちゃ。
 では、運動が脳にどう効くか、その逆にストレスがどう邪魔するか、大量の科学的根拠とともに怒濤のごとく語られるのが本書だ。我々にとって嬉しいことに、第2章(ストレスの章)には「自転車が脳に好影響を与える」ということが書いてあったりする。
 さらにいうなら、この自転車の話は第4章「やる気」の最新科学にも応用できる。
 なんだなんだ、2010年頃には私、2020年頃には国土交通省が、とにかく言ってきた「自転車通勤すると頭が冴えるよ〜」は、気分的な話ではなく、マジ本当だったのであります。最強の脳物質「BDNF]が出るのであります。
 そして第8章。
 健康な脳を保つためには。脳の老化に歯止めをかけるためには…!
 本書はけっこう現代人必読書かもしれん。


【ヒキタ関連Kindle本】
「津波から自転車で逃げられるか」疋田智著・NPO自転車活用推進研究会編集
https://www.amazon.co.jp/dp/B07JCXPGGL
「平成バブル物語 ~60年代生まれのための東京バブストーリー~」(田崎仁志著)
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GWRJPZH/

【ヒキタ新刊】
「新・自転車“道交法”BOOK」自転車活用推進法が分かる! 木世(えい)出版社
https://www.amazon.co.jp/dp/4777946207
「電動アシスト自転車を使いつくす本」東京書籍
https://www.amazon.co.jp/dp/4487809878

【好評既刊本】
「自転車“道交法”BOOK」小林成基(NPO自活研)と共著 こやまけいこ:イラスト 木世(えい)出版社
「だって、自転車しかないじゃない」朝日文庫
「おやこで自転車 はじめてブック」疋田智監修 ぼちぼち自転車くらぶ著 子どもの未来社
「明るい自転車質問室」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「自転車 困った時の即効お助けマニュアル」成美堂出版
「自転車ツーキニストの作法」SoftBank新書
「ものぐさ自転車の悦楽」マガジンハウス
「自転車会議!」(片山右京・勝間和代・今中大介・谷垣禎一と共著)PHP研究所
「自転車の安全鉄則」朝日新書
「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
「ロードバイクで歴史旅」木世(えい)出版社
「自転車をめぐる冒険」「同・誘惑」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」朝日新聞出版
「自転車生活の愉しみ」朝日新聞出版
「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
「自転車とろろん銭湯記」ハヤカワ文庫
 いずれも好評発売中。ネット内でのご注文はこちらにどうぞ。
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