【ヘルメット(3)】そもそも自転車死亡事故の原因は? の1018号

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  【ヘルメット(3)】そもそも自転車死亡事故の原因は? の1018号

■明日からヘルメット

 いよいよ明日から自転車ヘルメット義務化だよん。
 土曜の明日。さあ、何が変わるか! …って、何も変わらんな、たぶん(笑)。
 たしかに警察官がヘルメットを装着するようになった。それはいいことだ。
 でも、これにしたって、早くも「ん? 前からそうだったんじゃね?」てなもんだ。制式ヘルメットがあまりに違和感なく良くできてるんで最初からそうだったような感じ。すでに日常の風景だ。
 だけど、この自転車ヘルメット、まだまだ考えるべき問題はありましてね。
 前号の続きで「考えドコロ」を押さえていこう。

■考えドコロ3「インフラを放っておいて、自転車乗りは身を守れと?」

 たとえばね、東京だけを例にとっても「自転車レーン」って各所にあるわけですよ。
 青山通りなんてのもいい例だけど、両サイドの路肩に青い自転車レーンがずーっと延びてる。そして、見たことがある人は誰もが知ってる通り、そこは違法駐車の駐車場と化しているわけだ。
 本来は自転車によかれと思って作ったレーン。でも、そこに駐車車両がいるから、自転車は車道側に膨らんで走らねばならない。スゴく怖い。というより危ない。
 後からクルマがドーッと通って、おっと危ない、と思う人多数。で、その中のある割合で、事故を起こす人はいるんだろう。自転車にとっての「頻繁ヒヤリハット」がまさにここにある。
 で、事故が起きたらキケンが危ないんで、ヘルメットでアタマを守りましょう、となった。
 ……。
 何かがヘンだよね。そりゃそうだ、ヘンに決まってる。行政はやるべきことをやってない。で、そのリスクを自転車利用者に押し付けて「自分で守れ」「守るのが努力義務だ」つってるに過ぎないんだから。
 少なくとも「レーン上の違法駐車、取り締まれよ」と言いたいね。
 まあいい、言いたいのは「そういう構図をそもそも自転車ヘルメットは持っている」ということだ。
 だからこそ、オランダやアムステルダムは「自転車ヘルメット強制」を決してやらない。ヘルメット云々をいうよりも、まずは安全なインフラを整える。これこそがあるべき姿、本道だからだ。
 ……。
 ただ一方ね。それが即、現在日本に通じるのかどうか。
 たとえばこの東京が「一足飛びにアムステルダムのように、コペンハーゲンのように」なれるかといったら、そりゃ無理な話だ。彼らの夢のような自転車道、自転車レーンは、彼ら自身が半世紀以上かけて作ったものなんだから。
 半世紀ですよ、半世紀。
 その半世紀日本は何をしていたかというと「自転車って歩道でいんじゃね?」「自転車って左右デタラメでもいんじゃね?」と言い続けてきた。その結果の自転車社会が今の体たらくだ。
 ならば日本のソリューションはどこにあるのか。それが次とちょっとつながってくる。

■考えドコロ4「そもそもルール無視の自転車乗りが?」

 まあね、今回のヘルメットについて、いろいろガタガタ言うのは我々のようなマニアだけ。フツーの人は何にも考えちゃないよ。とね。それは恐らく事実だ。
 結局、変わらんよ、ただの「努力義務」じゃ。
 だってね、今の一般ママチャリの運転ぶり見てみ。逆走なんて当たり前、信号は守らない、車道歩道の区別なんてまったくつけてない。中にはフル電動の違法自転車なんてのに乗るヤカラもいて、もう自転車状況はひとことで言ってカオスだ。
 日本という、この息苦しいくらいに規則を守る国において、自転車だけは無法がまかり通ってる。
 その日本の自転車状況の中で、ヘルメットだけはかぶる…ってか(笑)? まさか(笑)。
 ありえないよね。どう考えても。現実性がない。
 で、今回のヘルメット努力義務化、4月になってテレビがちょっと騒いで、警察がちょっと「チラシ配り」とかのキャンペーンやって、その後、忘れ去られるだろうと思う。
「そういやそういうこともあったね」「そういやいつのまにか警察官はヘルメットかぶるようになったね」と思われるだけだ。
 で、その後1ヵ月、2ヵ月過ぎた後のマスコミ報道は「あれから1ヵ月、ヘルメットかぶってますか? ウザい、ダサい、どうせ罰則ないからそのまま」になるだろうと思うのよね。

■今後、自転車ヘルメットはどう報じられ、その後どうなるか

 自転車ヘルメットは、ウザい、ダサい、メンドくさい、云々、と。
 でも、それだけじゃない。それにプラスして「ヘルメットはかえって危ない」とか「ヘルメットしてたから死んだ」とかのトンデモ報道も出ると思うぞ。
 まさかウソだろって? いえいえそうでもない。クルマでも例があるのだ。
 かつて「シートベルト義務化」のとき、ベルトのせいで胸部圧迫で死んだとか、ベルトのせいで車両火災から逃げられなかった、みたいな例が多数報じられた。もちろん針小棒大ジャーナリズムのなせるところで「シートベルトしたくないだけだろ」と、ただそれだけが理由だ。
 自転車ヘルメットについても、今後こうしたネガキャンはたくさん出ると思うのだな。
 かぶりたくない人は、それはそれは、もういっぱいいるんだから。
 でも、見るべき基本はやはり「シートベルトは事故軽減に効く」「ヘルメットを付けた方が事故の被害は減じる」という総体的なデータだ。例外はあくまで例外に過ぎない。

 でもバカなメディアは「ヘルメットのせいで死んだ」みたいな少数例を喜んで取り上げるだろうなぁ。
 なぜならそっちの方が「面白い」から。
 そうして振り回されて、ウザがられて、結局、元の木阿弥でこの話は終わると思うぞ。
 私としては、あきらめ3割、残念4割、納得3割というところだ。


【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】

『新約聖書を知っていますか』阿刀田高著 新潮文庫

 前号の続きで、今度は必然のように新約聖書。
 旧約聖書は神話、つまり物語だから、こういう読み解き本に合ってたわけですよ。
 じゃあ新約はどうなのかなぁと思って読んでみると、なるほど、新約の「対話編」のような部分が、みんなミステリー仕立てになって、面白くなってる。そうか、こういうテイストだったな。思い出したよ。
 なかでも白眉なのは、新約聖書ふたつの「ありえねー」の解決だ。
 ひとつは処女懐胎、もうひとつはキリストの復活。
 両方とも、なぜこんな無理をしなくてはならなかったのか、というのが、新約聖書の謎であり、キリスト教を信じる(?)ための最大のハードルだったわけだ。
 阿刀田先生はこのアクロバティックなミステリーをやさしく(優しくと易しく)読み解いていく。
 簡単に言うならば「マリアは普通の人であってはならなかったから」で「キリストも普通の人であってはならなかったから」というべき結論にいたるわけだが、いや、そんな話では追いつかない。キリスト教が世界宗教として君臨し、大いなる魅力を放つのは、こういうファンタジー、つまり無理伝説があるからだ。本書はそのことを無理なく教えてくれる。


【ヒキタ関連Kindle本】
「津波から自転車で逃げられるか」疋田智著・NPO自転車活用推進研究会編集
https://www.amazon.co.jp/dp/B07JCXPGGL
「平成バブル物語 ~60年代生まれのための東京バブストーリー~」(田崎仁志著)
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GWRJPZH/

【好評既刊本】
「新・自転車“道交法”BOOK」自転車活用推進法が分かる! 木世(えい)出版社
https://www.amazon.co.jp/dp/4777946207
「電動アシスト自転車を使いつくす本」東京書籍
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「自転車“道交法”BOOK」小林成基(NPO自活研)と共著 こやまけいこ:イラスト 木世(えい)出版社
「だって、自転車しかないじゃない」朝日文庫
「おやこで自転車 はじめてブック」疋田智監修 ぼちぼち自転車くらぶ著 子どもの未来社
「明るい自転車質問室」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「自転車 困った時の即効お助けマニュアル」成美堂出版
「自転車ツーキニストの作法」SoftBank新書
「ものぐさ自転車の悦楽」マガジンハウス
「自転車会議!」(片山右京・勝間和代・今中大介・谷垣禎一と共著)PHP研究所
「自転車の安全鉄則」朝日新書
「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
「ロードバイクで歴史旅」木世(えい)出版社
「自転車をめぐる冒険」「同・誘惑」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」朝日新聞出版
「自転車生活の愉しみ」朝日新聞出版
「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
「自転車とろろん銭湯記」ハヤカワ文庫
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