自転車ヘルメットはいずれ完全義務化される? の1017号

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   自転車ヘルメットはいずれ完全義務化される? の1017号

■明後日からヘルメット努力義務化

 テレビや新聞が今さらのように連日「自転車ヘルメット努力義務化」をやってる。
 申し訳ないながら、私などに言わせると、いずれも「薄いなぁ」という感じだ。明らかに「ふだん自転車(ママチャリも含む)に乗ってない人」が番組を作ってる。
 ある局などは「ヘルメットのかぶり方」なんてのを懇切丁寧にやってたりしたが、いんや、そんなのは誰でも分かるがね。幼稚園児でもちゃんとかぶってるよ。
 では、なぜそんなのをやるかというと、プロデューサーから「尺(時間)7、8分程度で作れ、CM4(たとえば)をまたげよ」とか言われて、ディレクター、うーん、何やればいいんだろう、と考えあぐねて「かぶり方VTR」作ったりしてるわけだ。お気の毒。
 ふだん自転車に乗らないから、あまりヘルメットの意味と「これから起きるであろうこと」が分かってない。
 もちろん一部に良質なものはあるよ。でもあくまで一部だ。

■考えドコロ1「努力義務って何がどうなるの?」

 努力義務って何かと言われるなら、ごくごく大ざっぱに言うと「法律では定めるけど罰則ないかんね」という話だ。そもそも努力がどう、義務がどうと言われると、話が分かりづらくなる。
 罰則なし?
 では、法律としてまったく無効か、というと、そうでもない。
 ことは事故の際に立ち現れてくる。自転車がヘルメットをかぶってないと「はい、努力義務違反」ということで、過失割合が上乗せされる。たとえば「本来、クルマ90:自転車10だったのが、自転車の過失割合が15付加されて、クルマ7割5分、自転車2割5分」なんてことになる(たとえばね)。自転車の「自業自得」度合いが高まるわけだ。また、そういうことに応じて保険料の多寡も変わってくる。
 すなわち自転車ヘルメットというものは、いざ事故、というときモロおカネの話に直結する。
『CYCLE SPORTS』誌に大好評連載中の「無罪!?有罪!?サイクル大法廷」のような展開になるってわけ(←さりげなく宣伝)。

■考えドコロ2「原付のときはどうだった?」

 これは前号「86年ショック」のつづき。原付の場合の86年ショック(ヘルメットの完全義務化)って、じつは突然やってきたわけじゃない。
 これまたごくごく大ざっぱに言うと、次のような歴史をたどってきたのだ。
 転機は4つある。重要なのが3の1978年と、4の1986年だ。

1【1965年】オートバイの高速道路でのヘルメット着用努力義務規定化(←オートバイのヘルメットって、まずは高速道路の規制で登場した。でもまだ努力義務だよ)

2【1972年】40km/hを超える規制での道路でのヘルメット着用義務化(←これは “暴走族”“狂走族”“カミナリ族”などの珍走グループが問題になったから。でも「道路による」だった。たとえば30km/h規制の生活道路などではヘルメットなしでも構わなかった)

3【1978年】すべての道路での自動二輪(同乗者も含む・罰則あり)に対するヘルメット着用義務が課せられた。ここでマンガ『750ライダー』の光くんもかぶるようになり、石井いさみ先生はヒジョーにマンガが描きにくくなったという。で、重要なのが「同時に原動機付自転車(原付)にも着用努力義務が課せられた」こと。

4【1986年】50cc以下の原付車も、ヘルメット着用義務化(罰則つき)となった。

 読んでお分かりの通り、スクーターのヘルメット努力義務化は1978年である。
 でも、だーれも守らなかった。そして、その守らないでも罰せられない軽やかさが、空前のスクーターブームを生んだってわけ。特に女性たちがラッタッタ♪ と、軽やかに、スカートのままで、髪型を気にせず乗った。またちょっとカジュアルなバイク乗りも「手軽でいいじゃん」と、モンキーやゴリラに乗った。
 ところが、その原付(=50ccバイク)の高性能化と、事故の結果が次第次第に問題となり、ついにすべてのオートバイ(原付含む)が完全ヘルメット義務化となったのだ。それが86年。
 タイムラグは8年あった。
 ここから占えるものは何だろう。
 言うまでもなく、今後の自転車ヘルメットも何年かのタイムラグを経た後、完全義務化されるのではないかという話だ。

 もちろん前提となる次のような事実もある。
 ヘルメットの有無でアタマへの衝撃には17倍もの差が生じる(JAF調べ)。
 その結果、ヘルメットを着用していなかったケースの致死率は、着用していたケースの2.2倍以上である(警察庁)。
 …ふーむ。
 自転車ヘルメットの考えドコロはまだある。続きは次号。


【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】

『旧約聖書を知っていますか』阿刀田高著 新潮文庫

 前号の続きで、これも本棚から引っ張り出して読んでみた。
 そうそう、ダビデってカッコいいキャラだったんだよね、女子にモテモテだ、とか思い出しつつ、あ、と気づいたことがある。
 阿刀田先生のこの手の語り口、分かりやすさ、誰かに似てる、何かに似てると思ったら中田敦彦だよ。オリラジの。彼のYouTube。
 以前から、中田敦彦の『YouTube大学』って、スゲーな、面白いな、分かりやすいな、内容の方向性はさておき、このヒト才能あるな、と、私は思ってた。大づかみに伝える話術、物語の枝葉末節切りの巧みさ、元祖は(彼自身が知ってるかどうかは別として)阿刀田高のこのシリーズかもしれん。
 あ、いや、阿刀田高 → 池上彰 → 中田敦彦 とワンクッション入ってる、みたいな感じかもしれないな。
 ふむ、こういうことを考えると、阿刀田先生、もしも50年若ければ、教育系YouTuberと化してた可能性があるんじゃねか。いやマジで。だが、逆に考えると、しこしこ原稿用紙を埋めて、それがちゃんと商売になった先生の時代は、それはそれでシアワセだったといえるかも。
 ベラベラ喋って20分30分で消費され尽くしてしまうのは、これはこれでタマランという気もするもので。


【ヒキタ関連Kindle本】
「津波から自転車で逃げられるか」疋田智著・NPO自転車活用推進研究会編集
https://www.amazon.co.jp/dp/B07JCXPGGL
「平成バブル物語 ~60年代生まれのための東京バブストーリー~」(田崎仁志著)
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GWRJPZH/

【好評既刊本】
「新・自転車“道交法”BOOK」自転車活用推進法が分かる! 木世(えい)出版社
https://www.amazon.co.jp/dp/4777946207
「電動アシスト自転車を使いつくす本」東京書籍
https://www.amazon.co.jp/dp/4487809878
「自転車“道交法”BOOK」小林成基(NPO自活研)と共著 こやまけいこ:イラスト 木世(えい)出版社
「だって、自転車しかないじゃない」朝日文庫
「おやこで自転車 はじめてブック」疋田智監修 ぼちぼち自転車くらぶ著 子どもの未来社
「明るい自転車質問室」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「自転車 困った時の即効お助けマニュアル」成美堂出版
「自転車ツーキニストの作法」SoftBank新書
「ものぐさ自転車の悦楽」マガジンハウス
「自転車会議!」(片山右京・勝間和代・今中大介・谷垣禎一と共著)PHP研究所
「自転車の安全鉄則」朝日新書
「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
「ロードバイクで歴史旅」木世(えい)出版社
「自転車をめぐる冒険」「同・誘惑」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」朝日新聞出版
「自転車生活の愉しみ」朝日新聞出版
「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
「自転車とろろん銭湯記」ハヤカワ文庫
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