自転車イヤホンはどう禁止なのかの1042号

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         イヤホン禁止条例を考える1042号

■質問が来るんで「イヤホン条例」について

 自転車でイヤホン(またはネックスピーカー)話をすると、必ずメルマガに対して数通の問い合わせがあるんで、まとめて答えてみようかなと思います。
 問い合わせの趣旨としては「耳をふさぐ形であろうが、骨伝導であろうが、イヤホンはイヤホンだ、だから禁止でしょ」というのが大まかなところ。
 本当のところはどうなんでしょう。
 まずは、法律にあたってみよう。自転車は軽車両なんで、道路交通法に次のように定められている。

【道路交通法 第70条(安全運転の義務)】
【道路交通法第71条(運転者の遵守事項)1の6】
「道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転(70条)」するために「前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた(71条)」事項を遵守する義務がある。

 これらの条文全文をつらつら見るに、道交法71条の中には「ぬかるみの場合どうするか」「著しく他人に迷惑を及ぽすこととなる騒音を生じさせるようなヤカラについて」などが定められているんだが(←昭和だなあ)、イヤホンについては「前各号に掲げるもの」の中に入っていない。
 つまり、イヤホンの使用については「その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた」事項として、都道府県それぞれの公安委員会が定める規則(議会を通れば条例)マターとなっているわけだ。

■東京都を例にすると

しからば私は東京都に住んでいるんで、都条例(規則)を見てみよう。
 
【東京都道路交通規則 第8条(運転手の遵守事項)】
(5) 高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く“等”安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。(後略)

 各道府県の場合もおおむねこれと同じだ。
 では、東京都の場合、どこに力点が置かれるかというと、3つ目の等、すなわち“等”の後だ(“”は筆者による)。つまりこの規則は「安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転」することを咎めているわけで、“等”の前、つまり「高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く」というのは「〜聞こえないような状態」の例示に過ぎない。
 この規則に対して「だって、これ、ラジオじゃなくてCDだもん、スマホだもん」というような屁理屈をこねる人はいないだろう。おまえは小学生か、てなもんだ。
「何を屁理屈言っちょるか、ラジオだろうが、CDだろうが、安全な運転に必要な交通に関する音や、声が聞こえないような状態にしているのが悪いに決まっちょる!」とたしなめるのが大人の対応というヤツだ。

■だから警察は「音量に注視」

 そういうわけで、逆にいうと、周囲の音がちゃんと聞こえて、「安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえ」る状態を保っていれば、今のところは大丈夫(2023年12月現在)。
 事実、前号“Oladance”の輸入業者が「こういうオープンタイプのイヤホンは道交法または都条例に引っかかりませんか?」と警察に聞いたところ、次のような答えが返ってきた。
「耳をふさがないものであれば大丈夫」ではあるものの「音量には注意してください」。
 まあね、そういう意味で、自転車乗車時のオープンタイプイヤホン、骨伝導型イヤホン、ネックスピーカーなどは、カーステと同じなのだ。

■もうひとつ読者からのリアクション

 もうひとつ、メルマガ読者からこんなリアクションがありました。

(前略)さて、1040号にて「シャーロック・ホームズに自転車のシーンはあまりないんだけどね」と述べておられますが、これは誤りです。
 「一人ぼっちの自転車乗り」「プライオリスクール」の2作で自転車が重要な役割で登場し、特に後者では荒野に残ったタイヤ跡が事件解決までのポイントの一つになります。
 本シリーズの公式挿絵画家であるシドニー・パジェットが描いたイラストでは両作とも自転車はセーフティー型のように見えます。(後略)

 失礼いたしました。
 シャーロック・ホームズシリーズの中で「私が読んだもの」に関しては自転車があまり出てこないというだけで、こうして詳しい方にとっては「何を言うとる」ということになりますね。そりゃそうですね。すいません、当該部分、削除訂正しておきます。


【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】

『災害列島の作法』 土屋信行著 主婦の友インフォス

 元日からの震災に襲われた我々日本人にとって、もしかしたら今(いや、今後)読むべき本。
 女川町の復興が中心だけど、多摩ニュータウンや著者の土木屋(著者の言葉による)としての半生が語られる。そこにある「土木屋の志」のようなものに感銘を受ける。

 著者によると、災害復興の基本は「区画整理」にあるという。しかし、区画整理は誰からも嫌われるし、余計なお世話という扱いを受ける。だが、復興にはまず区画整理というアプローチが不可欠であり、そこを土台として100年先、200年先のまちづくりを考えて取り組まねばならない。そして、それをするには土地の歴史を知り、先人の知恵を活かすことが重要だという。
 それらのことを考えて、女川町の復興計画は練られた。もっともこだわったのが「すべての家から海が見えるまちづくりを」ということだった。
 意外? 私も最初はそう思った。そんなことよりも防潮堤を作るべきではないか、と。
 ところが、そうじゃない。津波被害を完全に防ぐことのできる防潮堤なんて作れない。そんなお金などない。それよりも問題だったのは「あの日、海が見えないことで行動を誤った人が多数いた」ことだ。

 本書にはまちづくりに携わる無名の公務員や団体職員が多数出てくる。著者土屋さんもその中の一人だ。
 土木というのは、地味で根気の要る仕事だろう。
 私も都市工学というものをほんの少し囓ったことがあるゆえに、その大変さとやりがいはワカランではなく、こうした仕事に携わる人々を本気で尊敬している。


【ヒキタ関連Kindle本】
「津波から自転車で逃げられるか」疋田智著・NPO自転車活用推進研究会編集
https://www.amazon.co.jp/dp/B07JCXPGGL
「平成バブル物語 ~60年代生まれのための東京バブストーリー~」(田崎仁志著)
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GWRJPZH/

【好評既刊本】
「新・自転車“道交法”BOOK」自転車活用推進法が分かる! 木世(えい)出版社
https://www.amazon.co.jp/dp/4777946207
「電動アシスト自転車を使いつくす本」東京書籍
https://www.amazon.co.jp/dp/4487809878
「自転車“道交法”BOOK」小林成基(NPO自活研)と共著 こやまけいこ:イラスト 木世(えい)出版社
「だって、自転車しかないじゃない」朝日文庫
「おやこで自転車 はじめてブック」疋田智監修 ぼちぼち自転車くらぶ著 子どもの未来社
「明るい自転車質問室」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「自転車 困った時の即効お助けマニュアル」成美堂出版
「自転車ツーキニストの作法」SoftBank新書
「ものぐさ自転車の悦楽」マガジンハウス
「自転車会議!」(片山右京・勝間和代・今中大介・谷垣禎一と共著)PHP研究所
「自転車の安全鉄則」朝日新書
「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
「ロードバイクで歴史旅」木世(えい)出版社
「自転車をめぐる冒険」「同・誘惑」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」朝日新聞出版
「自転車生活の愉しみ」朝日新聞出版
「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
「自転車とろろん銭湯記」ハヤカワ文庫
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