道交法は戦前の名残じゃないよの1037号

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       道交法は戦前の名残じゃないよの1037号

■なんだか奇妙な話を聞いた

 以前から自転車シンポジウムみたいなものに招かれることが多い私ヒキタでありますが、先日、とある団体主催の会場で、ミョーな話を聞いた。
 なんだか市民団体の「エコおばさん@ちょっとヒステリック気味かにゃ?」というような感じの人だったんだけど、こんなことをおっしゃる。
「でも、ヒキタさんがおっしゃる“道路交通法”は、戦前にできたものでしょ? その当時はまだクルマなんて、今みたいに走ってなかったし、人力車や馬車に混じって自転車が走るというのが現状だったわけですよね」
 ふむ、道交法はホントは戦後にできたんだけど、ま、いい。確かに「自転車=車道」を最初に提示した「道路取締令」は、1920年(大正9年)だから、ま、当時の交通事情といえば、その通りであります。
 その当時の定めを前提に、戦後になって「軽車両」が定義づけられた。人力車、リヤカー、馬車、そして自転車などを含む、幅広い概念であります。
 で、なんだろう?
「ですからね、その頃の交通事情にあわせて、いつまでも“自転車は車道”というのはおかしいんじゃないかしら、“自転車は歩道”の方が現状に即してるんじゃないかしら」
 あー、なるほどね。
 この方は、なにか根本的なカンチガイをしてらっしゃる。

■自転車=車両は、昔も今も変わらぬ概念

「ふむ、今の日本の道交法のコンセプトは、いささか古すぎるゆえに、“自転車は車道”なんてタワゴトを言ってる、というわけですね?」
「そうそう、そうですよ、そうですよ」
「ふーむ、でも、そいつぁ少々ヘンじゃないすかね。“自転車は車両の仲間ゆえに、車道が基本”というのは、なにも日本だけじゃないんですよ。ドイツだって、フランスだって、みんな自転車は車道です。あんなに“自転車(専用)道”が整備されたオランダなどの国にしても、自転車道がないところは、みんな車道を走る。これが基本なんです。これらの国々もみーんな古い道交法を引きずってるということなんでしょうかねぇ」
「え、そうなんですか? でも、ドイツもフランスもオランダも古い国ですから、古い法律に則って、アップデートされてないだけじゃないかしら」
「なるほど、では、米国も、韓国も、デンマークも、イタリアも、スペインも、中国も……、というか、日本以外のほぼすべての国々が、自転車は車道、というより“非歩道”としていますが、それもやはり古いからですか?」
「え?」
「本当のところは、古いも新しいもないんですよ。
 今でも、そして、たぶん未来も、ほぼすべての国で“自転車は車両”であり“歩道以外の部分を走る”のが基本です。今後もそこに変化はないでしょう。“歩道以外の部分”とは、多くの場合、もちろん“車道”です。
 新たに自転車専用道を設置して、クルマと自転車と歩行者を完全分離した(羨ましい)地域も、国によってはありますが、そういう国にしても、自転車道がなくて、目の前に“車道 or 歩道”の選択肢しかない場合は多々あります。そして、そういう場合は必ず車道を走るのです。自転車が歩道を走ることが“アリエナイ!”のですよ」

■現状は歩道、でも、積極的にすすめはしない

「え、そうなんですか…」
「恐らく普段乗ってらっしゃるのは、いわゆる“ママチャリ”ですよね? 通常どこを走りますか?」
「…、ほ、歩道です。だって、恐いから…」
「そうでしょうね。私はそれを言下に否定はしません。今の日本ではたしかに慣れてない人には恐いでしょう。歩行者優先であくまで徐行通行してください。でも、積極的にすすめもしません」
「なぜですか?」
「それは、自転車は車両として考えた方が、長い目で見ると安全だからです。限られたスペースをうまい具合にシェアすることを目指して、クルマもバスも自転車もマネジメントする。それこそが、自転車を利用する際の、各国各地域の“知恵”だったのです」
 日本にしても同じだ。
 道路交通法というのは、これまでも何度も何度も改変されて、現在に至るわけなんだけど、そのたびごとに「自転車」というものは、あらためて「車両の仲間」である、と認識されてきた。
 決して「戦前の古い名残が今でも残ってるアナクロな法律」なんてシロモノではないのだ。

■でも、車道は恐いから歩道を?

「でも、車道は恐いじゃないですか…」
「そう、今のままではいけません。私もそう思いますよ。だからこそ、車道左端は自転車のスペースだという周知が必要だし、そういうレーンも必要になってくる。もちろん“左側通行の徹底”も必要でしょうし、ドライバーにも、対自転車教育をしっかりなすべきだと思います」
「それでも、車道を通るのはイヤです」
「そうですか。残念ですね。…でも、それは少し“自転車エゴ”だということを考えてみてもいいかしれません」
「?」
「いかがでしょう。歩道の中には誰がいますか?
 もちろん“歩行者がいる”というのが、一義的な意味です。しかし、その中には、お年寄りがいて、子どもがいて、ベビーカーがいて、車椅子がいて、白杖を持つ人がいて、つまり、さまざまな交通弱者がいるわけです。
 そうした交通弱者(自分は他者を傷つけないけれど、他者からは傷つけられる可能性がある存在)を守るために歩道はあるわけですよ。
 だからこそ、世界中で、自転車は歩道を走ってはいけないのです。自転車は他者を傷つけることが十分に可能ですから。
 そうした交通弱者たる存在を蹴散らし(あるいはそこまででなくとも)歩道を傍若無人に自転車で走り回ることの罪深さ(今現在の日本はそうなっていますよね)。我々は今、このことをよく考えなくてはならないと思います」


【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】

『東京怪奇酒』 清野とおる著 KADOKAWA

 幽霊が出る事故物件とか、怪奇現象の起きる公園とか、そういうところに酒を持っていって一人飲む、という体験談連作マンガ。なんだそれ(笑)。面白いんだか面白くないんだか、怖いんだか怖くないんだか、よく分からない。正直申しあげて、マンガ読んでみてもワカランかった。
 分かるのは、この清野さんというマンガ家が、あの壇蜜さんのダンナだという事実だ。
 そう思って読み進めると、マンガの後半に連載の担当編集(女性)や、編集長(女性)やらの顔写真がチラホラ出てくるんだけど、みんな美人。不思議。というか、この清野さんという人はおそらくモテる人なんだろう。
 マンガを読んでる限り、「バリバリ仕事ができる!」というタイプにも、「マッチョで男らしい!」というタイプにも、「イケメンで女がほっとかない!」というタイプにも見えないんだが、それでもモテる。そういう人はいる。そして、この清野さんはそういう人なのだ。
 はやく幽霊にでも大島てるにでも呪われてしまって下さい<(_ _)>。


【ヒキタ関連Kindle本】
「津波から自転車で逃げられるか」疋田智著・NPO自転車活用推進研究会編集
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「平成バブル物語 ~60年代生まれのための東京バブストーリー~」(田崎仁志著)
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【好評既刊本】
「新・自転車“道交法”BOOK」自転車活用推進法が分かる! 木世(えい)出版社
https://www.amazon.co.jp/dp/4777946207
「電動アシスト自転車を使いつくす本」東京書籍
https://www.amazon.co.jp/dp/4487809878
「自転車“道交法”BOOK」小林成基(NPO自活研)と共著 こやまけいこ:イラスト 木世(えい)出版社
「だって、自転車しかないじゃない」朝日文庫
「おやこで自転車 はじめてブック」疋田智監修 ぼちぼち自転車くらぶ著 子どもの未来社
「明るい自転車質問室」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「自転車 困った時の即効お助けマニュアル」成美堂出版
「自転車ツーキニストの作法」SoftBank新書
「ものぐさ自転車の悦楽」マガジンハウス
「自転車会議!」(片山右京・勝間和代・今中大介・谷垣禎一と共著)PHP研究所
「自転車の安全鉄則」朝日新書
「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
「ロードバイクで歴史旅」木世(えい)出版社
「自転車をめぐる冒険」「同・誘惑」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」朝日新聞出版
「自転車生活の愉しみ」朝日新聞出版
「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
「自転車とろろん銭湯記」ハヤカワ文庫
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