なんてこと、木世(えい)出版社・民事再生法の939号

  ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┏━┫ 週刊 自転車ツーキニスト ”Weekly Bicycle Tourkinist” ┣━┓
┃ ┗┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳┛ ┃
┗━━┛                          ┗━━┛
    なんてこと、木世(えい)出版社・民事再生法の939号

■民事再生法の適用

 いまという時代を象徴する、と言うべきか、少々ショッキングな話がありまして…。
 旅雑誌、グルメ雑誌、自転車雑誌をはじめ、アクティブな趣味の雑誌を多数出していた木世(えい)出版社(「えい」は本当は木偏に世の1文字)が、一昨日付で、民事再生法の適用を申請、受理されました。

 多品種少量主義で90年代から急成長。売り上げ100億円に達した準大手出版社でした。
 私はこの出版社から『日本史の旅は自転車に限る』『天下を取り損ねた男たち』『自転車“道交法”BOOK』など、合計、6冊の本を出していて、なおかつ連載をもってる月刊誌もあり、もう大ショックです。
「出版という産業」の構造不況が年々深刻になる中、コロナ禍がダイレクトに襲ったという形です。

■愛と青春の出版社…

 私としては20年来の付き合いでした。
 最初に「BiCYCLE CLUB」誌にコラムを持ったのが、2000年ピタリの頃だったかなぁ。
 そこからずっと毎号書いてた。バイクラ誌以外も、自転車がらみのムックがあるたびに、いろいろ書かせてもらった。
「旅自転車で全国のダムめぐりだ!」とか「ハワイの平等院鳳凰堂を自転車で見にいくぞ!」とか「小笠原諸島を自転車でめぐる! 行ったら最後、1週間は何があろうと帰ってこられなーい!」とか、いろいろやらせていただいたものです。
 楽しかったなぁ。
 木世出版社というのは、ひとことで言うなら「何でもアリの、楽しいモーレツ出版社」でね。
 そんなマニアックな企画、ほかのどこもやらねぇよ、なんてこともフツーにOKだったし、その意気に感じて(なのかどうか)スタッフは毎夜の会社泊まり込み、月にいくつも〆切かかえて、それでもやってたもんです(←特にヤマちゃん)。
 創業は昭和48年。でも「昭和の出版社」という雰囲気じゃない。
 モーレツでありながらも、どっかオシャレで横文字の香りが漂う。そこはそう「平成の出版社」だったわけです。

■コロナ禍がダイレクトに

 まあしかし、うすうすと感じているところはないわけじゃなかった。
 特にこの1年はキツかったよ。
 同社得意のアメカジ雑誌(Lightning)や、ハワイ雑誌(ハワイスタイル)、サーフィン雑誌(NALU)なんて、読んでも読者そこに行けないし、そもそも取材に出られないし、ものによっては発売延期がずっと続いてて、これでどうしてビジネスが成り立つんだろうと思ってた。
 こんな風に言われたこともあったんだよ。

【 [特集]この出版大不況に元気な出版社「エイ出版社」 ~好調の秘訣は“ニッチメジャー”~】
https://www.startrise.jp/articles/view/1269?fbclid=IwAR36H12xw-IDNuMg42zmmGWMdIsVD8JxHAqDczERQ2aHszNI_QApeOQHD6g

 それが、コロナ禍にあって、むしろ逆にはたらいた。

■「BiCYCLE CLUB」誌は大丈夫

 ただ、誤解してもらっては困るのは、自転車関連の木世(えい)物件は、今後も大丈夫だということでね。
 たとえば私が連載をもっている『月刊BiCYCLE CLUB』誌や、不定期刊の『自転車生活』などは、すでにドリームインキュベータ社によるピークス(株)に身売り後で、刊行に支障はないという。
 まだちゃんと市場価値のあるブランドについては「これはヤバい」時点で、新会社ピークスに売ってた(んですかね?)。
 ちょっと前から「クラウンジュエル」を売り払っていたという格好だった、のかな(;_;)。

 ああ、時代がひとつ終わったという気がします。
 木世(えい)さんにかぎらず、出版社の苦境、これからも続くんでしょう。
 いえ、出版に限らない。新聞だってモロそう。地上波テレビにしても、5Gの後は分からない。
 なにか時代、そしてメディアというものが急旋回して、別のフェーズに突入中という気がしてます。


【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】

『趣味の文具箱 Vol.44』 木世(えい)出版社

 こんなスゴいニッチ本も、木世出版社ならではでした。このムック、ニッチもニッチ、万年筆の「インク大特集!」だ。万年筆の特集じゃなくて、インクの特集。しかも602品のカタログ付き。
 編集部によるとこうだ。

 底なしの沼のようなインクの楽しみを、万年筆ファンは「インク沼」と呼び、無限ともいえる快楽をみんなで語り合っています。万年筆ブランドが作るインクの色数は増え、インクブランドが作るインクの色数は凄い勢いで拡大中。全国各地の専門店のオリジナルインクも増えています。
 そんな万年筆インクの最新情報を集めています。
 インク特集号恒例の「万年筆インクカタログ」は全602色を掲載。史上最大級のインク色を一覧で掲載しています。ぜひご覧ください!

 民事再生法により、なんとか再出発できる企業は、全体の3割に満たないと言われています。
 木世出版社がなんとか、その3割に入れますように!


【ヒキタ関連Kindle本】
「平成バブル物語 ~60年代生まれのための東京バブストーリー~」(田崎仁志著)
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GWRJPZH/
「津波から自転車で逃げられるか」疋田智著・NPO自転車活用推進研究会編集
https://www.amazon.co.jp/dp/B07JCXPGGL

【ヒキタ最新刊】
「新・自転車“道交法”BOOK」自転車活用推進法が分かる! 木世(えい)出版社
https://www.amazon.co.jp/dp/4777946207
「電動アシスト自転車を使いつくす本」東京書籍
https://www.amazon.co.jp/dp/4487809878

【好評既刊本】
「自転車“道交法”BOOK」小林成基(NPO自活研)と共著 こやまけいこ:イラスト 木世(えい)出版社
「だって、自転車しかないじゃない」朝日文庫
「おやこで自転車 はじめてブック」疋田智監修 ぼちぼち自転車くらぶ著 子どもの未来社
「明るい自転車質問室」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「自転車 困った時の即効お助けマニュアル」成美堂出版
「自転車ツーキニストの作法」SoftBank新書
「ものぐさ自転車の悦楽」マガジンハウス
「自転車会議!」(片山右京・勝間和代・今中大介・谷垣禎一と共著)PHP研究所
「自転車の安全鉄則」朝日新書
「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
「ロードバイクで歴史旅」木世(えい)出版社
「自転車をめぐる冒険」「同・誘惑」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」朝日新聞出版
「自転車生活の愉しみ」朝日新聞出版
「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
「自転車とろろん銭湯記」ハヤカワ文庫
 いずれも好評発売中。ネット内でのご注文はこちらにどうぞ。
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%95D%93c%92q&x=0&y=0

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です