「電動サイクル」あるいは「バイク型モビリティ」という絶望の1033号

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     「電動サイクル」あるいは「バイク型モビリティ」という絶望の1033号

■市長自ら「利用を呼びかけた」

 11/11(土)付の東京新聞に次のような記事が載った。

 千葉市は来年1月から電動の「バイク型モビリティ」のシェアサービスを全国に先駆けて始める。こぐためのペダルがなく、バイクのようにスロットルを回して走る。試乗した神谷俊一市長は「安定感があり、すぐに慣れる。新しい技術をいち早く体験してみて」と利用を呼びかけた。
 のだそうだ。

【電動自転車?いいえ 「バイク型モビリティ」導入試行 運転免許不要最高速度20キロ 千葉市、湾岸地区で】
https://www.tokyo-np.co.jp/article/289415?fbclid=IwAR1BsOTyHwRxBFBvJ6LPtQgyARdzytWucAxiIQRsSrRy9m4WNwLn2CpY3Ug

 ついに来たか。電動キックボードにサドルを付けた「電動サイクル」のシェアサービスだ。ペダルなし、右手にスロットル。何もせずしてハイパワーが出る。
 私に言わせると、もう最低以下としかいいようがないが、事情を知らないヒトを騙すには十分で、こういう政治家モドキのようなヤカラが、これを推進するんだろう。
 今後、このクソのようなモビリティが起こす事故が、爆発的に増えるだろう。賭けてもいいよ。

■すでにこうなってしまったという規程

 同新聞の写真を見てのとおり、市の職員が、ヘルメット(のつもりのタダの帽子)をかぶって乗ってるわけで、もうここからして何ぁーんにも分かってないことが見え見えなんだが、まあ、それは今回は言うまい。
 この電動サイクル(バイク型モビリティ)、規程としてはこうなってる。

◎自転車と同じ走行スペースを通る。
◎制限速度・車道20km/h、歩道6km/h。
◎ペダルなし、スロットルを操作して走る。
◎パワー600W以下。
◎ナンバープレートあり。免許不要、16歳以上、ヘルメットは努力義務。

 どこかのおバカさんが何も考えないで、すでにこう決めてしまいましたとさ。
 まず無免許OKです。それなのにナンバープレートはあり、で、パワーは600WまでOKというイビツさ。
 ちなみに普通の電動アシスト自転車が200W程度だから、600Wというのがいかにハイパワーか分かろうというものだ。
 でも、最高速は20km/hだという。
 スゴいね、つまりスロットル一発、0-20km/h一瞬だよ。昭和の暴走族のゼロヨンみたいなもんだ。それがいかに危険なことか分からないんだろうか。

■ダメの構図

 で、一番ダメなのが、この電動サイクルの走行スペースだ。
 どこを走りますかね。
 歩道に決まってますよね。「20km/hまでしか出ないと車道はクルマが怖い」ですもの。
 ましてや、この電動モビリティ「電アシと違ってペダルを漕ぐ必要がないのでふらつかない、お年寄りにオススメ」だそうですから。車道なんてハナから走るわけがない(笑)。
 さて、歩道は6km/hまでですが。……もちろん無理ですね。6km/hなんてのは早歩きと同じ程度のスピードですから、ふらついて仕方がない。お年寄りなんてパッタリ倒れる危険すらある。
 結局、歩道を20km/hで走ることになる。当然の帰結だわな。ちなみに20km/hは通常のママチャリの1.5倍程度のスピードだ。
 歩道だから、左右の規程なんてない。左も右もデタラメにヤンキー中学生のママチャリのように走りまくるだろう。
 そして「シェア」!
 何も知らない外国人たちがこりゃ便利、と、きっとデタラメに使うだろうよ。事故ひんぴんと起こすだろう。保険なんて入ってないし、メンドクサイから、そのまま逃げるだろう。
 いいですか、未来の現実はこうです。

600Wのハイパワー加速力を持った電動バイクが、歩道に溢れかえって、ママチャリの1.5倍のスピードで左右デタラメに走りまくって、歩行者を蹴散らしていく。

 ちっとも大げさじゃない。
 当たり前だが、歩道は老人、子供、ベビーカー、障碍者にとってのサンクチュアリなのだ。
 そこにこのような危険物が放たれるというクソバカな事態が、今後起きるわけだ。
 もう、コレを絶望と言わずして何と言えばいい。

■行政のオタメゴカシ

 行政および警察はきっとこう言う。「車道モードは緑ランプ点灯で、歩道モードは緑ランプ点滅させるのが規則で決まってます。歩道は6km/hモードでないと走れません、だから大丈夫」とね。
 安心しろ。ぜーったいに守られない。
 取締りもしない。
 私はココロの底から断言するよ。
 現在の違法フル電動バイクの蔓延に何もせず、そもそも自転車レーン上の違法駐車にも、逆走アホ自転車にも無策な警察が「緑の点滅ランプがあるから大丈夫」(笑)。
 笑わせるな。
 ノーヘル運転だって蔓延するだろう。社会実験の千葉県職員からして、あの調子なんだから。

 この電動サイクル(=バイク型モビリティ)というのは、現在の日本の行政が国民のことをまったく考えていない、という証左となっていると思う。
 未来は暗い。
 大変残念なことだけど。


【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】

『ABC殺人事件』 アガサ・クリスティ著 ハヤカワ文庫

 また、小4の長女がいま読んでる本。
 パパがかつて読んだ文庫本だから、文庫カバー(茶色く変色してる)の背に、かつての私の筆致でタイトルが書いてある。
 クリスティは面白いよね。で、中毒性がある。
 パパは大学入試直前の高校時代に読んでて「あー、勉強しなくちゃ、でも面白い面白い、で、今日も夜が更ける」という状態だったんで、読後感は後悔ばかりだった。
 キミは今のうちに読みあさり、大学入試前には全部読み終えていることをすすめるよ。マジで。


【ヒキタ関連Kindle本】
「津波から自転車で逃げられるか」疋田智著・NPO自転車活用推進研究会編集
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「平成バブル物語 ~60年代生まれのための東京バブストーリー~」(田崎仁志著)
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【好評既刊本】
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「電動アシスト自転車を使いつくす本」東京書籍
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「自転車“道交法”BOOK」小林成基(NPO自活研)と共著 こやまけいこ:イラスト 木世(えい)出版社
「だって、自転車しかないじゃない」朝日文庫
「おやこで自転車 はじめてブック」疋田智監修 ぼちぼち自転車くらぶ著 子どもの未来社
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「自転車 困った時の即効お助けマニュアル」成美堂出版
「自転車ツーキニストの作法」SoftBank新書
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「自転車の安全鉄則」朝日新書
「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
「ロードバイクで歴史旅」木世(えい)出版社
「自転車をめぐる冒険」「同・誘惑」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」朝日新聞出版
「自転車生活の愉しみ」朝日新聞出版
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