眉毛の謎が解けた?909号
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眉毛の謎が解けた?909号
■カミさん鬼滅ヲタ現象
週末ですねぇ。いやまあ、何だかんだでいまだに疋こもって(笑)ます。
子供たちも家にいます。コロナがあろうがなかろうが。うちの子たち、インドア派だから。
私はといえば、家にいて、自宅で原稿仕事などしながら、彼らの動きをちらちら観てるんですが、アニメの『鬼滅の刃』がね、もう彼らに大人気。主人公の炭次郎(たんじろう)、とか、鬼になった妹・禰豆子(ねずこ)とか、善逸とか、伊之助とか、もうパパも覚えちゃったよ。
でも、観てるとなんだかストーリーが激しいんだね。血まみれの戦いだっていっぱい。
いろいろギャグを交えながらも(←ここが今風)でも、いろいろ激しいわけだ。……なんだかな、オヤジになった私としては、もはやあんまり悲しい物語とか激しい物語は見たくないのです。
ところが意外なことに、カミさんは大好き。
彼女は、昨今、完全に鬼滅ヲタと化してまして、台所仕事なんかをしながら、スマホで『鬼滅ラジオ』なんてのをかけてる。鬼滅ラジオって、内容といえば、もう鬼滅の声優たちが、ずーっと鬼滅ストーリーについての感想をしゃべってるだけ。すごいなぁ、こんな「ラジオ」が成り立つのか。
■昭和の少年マンガ、主人公の眉毛
そうそう、でね、眉毛の話なのであります。
昭和の少年マンガ、主人公の眉毛が太すぎるじゃないかという話。以前、このメルマガで書きましたね、あれのことなんすけど…。
【『疋田智の週刊自転車ツーキニスト』眉毛の太さに考える905号】
https://hikitabike.com/mayuge
ここにひとつの謎があった。
星飛雄馬や、戸川万吉(男一匹ガキ大将)、番場蛮(侍ジャイアンツ)、赤城忠治(夕焼け番長)などの太眉キャラクターに周囲をとりかこまれながら、大ヒット野球マンガ『ドカベン』の登場人物だけは太眉じゃないのである。あのマンガにおいては、眉毛は隠れているか、または「ない」のだ。
ここが謎なんでありますよ。
あの時代、太眉全盛期の中に、水島新司だけはあえて眉毛を隠してた。あえて? そう、あえて。
だって、あぶさんや土井垣なんて、眉毛を隠してたどころか、眉毛ないんですぜ。あぶさんは主人公だし、土井垣はクールな二枚目キャプテンだ。それなのに眉毛なし。
水島本人は、たぶんに意識的だったと思うのですよ。
私は思う。
一言でいや、あれは、梶原一騎的なものに対するアンチテーゼだったんじゃないかって。
考えてみれば『ドカベン』のストーリーもそうだった。
ドカベンは、一般的にスポ根ものに分類されがちなんだけど、読んでみるとそうじゃない。
殿馬の秘打も、岩鬼の悪球打ちも、梶原一騎的なスポ根ストーリーテリングからすると、どこか飄々として、悪く言うとふざけてる。真面目さに欠けてる。少なくとも汗と涙と根性に欠けてる。
でも『ドカベン』は、だからこそ軽やかで理論的で面白かったわけですよ。
■野球マンガにおける「野球」の意味
ここには、マンガ世界における「野球の意味」が大いに関わってくると思う。
驚いたことに、川崎のぼるは、最初の頃、野球のルールも知らずに、あの『巨人の星』を描いてたんだそうだ。でも、確かにそうであっても成り立つかな、と思う。
だって『巨人の星』にとって、野球というゲーム自体はストーリーに関係ないからね。野球はあくまで舞台設定のひとつに過ぎず、メインテーマは父と子の相克だから。
いわば野球でもサッカーでも何でもなりたつ。卓球でも成り立つ。
だから梶原一騎は、同じテーマを母と子に替え、柔道でも物語を書いた(貝塚ひろし画『柔道讃歌』)。うわ、これも極太眉だ。
それに比して、水島新司は「野球こそが大好き」な人だった。
彼は、野球という球技自体を愛していた。自分で草野球のチームを持ち、プロの名球会などにも関わり、野球文化というものに大いに貢献しようとしていた。
だからこそ「ああいう、野球の本質をわかってないマンガ、涙と汗とでグチャグチャで、眉毛ばっかり太い漫画と一緒にするな」なんて思ってたんじゃないだろうか。
それこそが水島新司が眉毛をあえて描かない理由だったんではないかと、私は思うわけです。
■漢(おとこ)の生き方、言うだけ番長!
ま、そんなこと言いながら、私ヒキタは個人的に梶原系の物語も好きではあるんですけどね(笑)。
うむ、漢(おとこ)の生き方のほとんどは梶原一騎に学んだ。←言いすぎ。
そうそう、梶原的太眉路線(って梶原自身は絵を描かないんだけど)のひとつ『夕焼け番長』ってあるでしょ。のちに『サイクル野郎』を描くことになる荘司としお画の。
あれこそが「言うだけ番長」のパロディ元でありましてね。
何が言いたいかといいますと、ときどき「言うばっかりで何もしない政治家」のことを「口だけ番長」なんていうことがあるけど(特に若めの政治コメンテーターとか)ブブー、間違いです。「口だけ番長」だと何のシャレなんだか、なんで番長なんだか全然分からない(笑)。
夕焼け番長 → 言うだけ番長 のシャレなんですよ、あれは。
【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】
『サイクル野郎』荘司としお著 少年画報社(発売当時)
ふーむ、信じがたいことに名作『サイクル野郎』全409話が全部タダなのであります。
もちろん海賊版なんかじゃない。「スキマ」というマンガ配信サービス。
なんでタダなのかなと思ってたら…、読み始めたらすぐ分かる。1話ごとにけっこうデカい広告が入る。あー、なるほどね。でも、その程度なんということもないな。民放テレビと同じだ。
【『サイクル野郎』スキマ】
https://www.sukima.me/book/title/gomabooks0000887/
さあ、あの懐かしくも、読み出すとちょっとだけ恥ずかしいくて照れくさい(笑)サイクル野郎世界を堪能してみてちょ。
それにしても、このコロナ禍の引きこもり時代、マンガ配信サービスは、もう過当競争というのか何というのか、スゴいことになってるね。本気で。
【ヒキタ関連Kindle本】
「平成バブル物語 ~60年代生まれのための東京バブストーリー~」(田崎仁志著)
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GWRJPZH/
「津波から自転車で逃げられるか」疋田智著・NPO自転車活用推進研究会編集
https://www.amazon.co.jp/dp/B07JCXPGGL
【ヒキタ最新刊】
「新・自転車“道交法”BOOK」自転車活用推進法が分かる! 木世(えい)出版社
https://www.amazon.co.jp/dp/4777946207
「電動アシスト自転車を使いつくす本」東京書籍
https://www.amazon.co.jp/dp/4487809878
【好評既刊本】
「自転車“道交法”BOOK」小林成基(NPO自活研)と共著 こやまけいこ:イラスト 木世(えい)出版社
「だって、自転車しかないじゃない」朝日文庫
「おやこで自転車 はじめてブック」疋田智監修 ぼちぼち自転車くらぶ著 子どもの未来社
「明るい自転車質問室」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「自転車 困った時の即効お助けマニュアル」成美堂出版
「自転車ツーキニストの作法」SoftBank新書
「ものぐさ自転車の悦楽」マガジンハウス
「自転車会議!」(片山右京・勝間和代・今中大介・谷垣禎一と共著)PHP研究所
「自転車の安全鉄則」朝日新書
「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
「ロードバイクで歴史旅」木世(えい)出版社
「自転車をめぐる冒険」「同・誘惑」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」朝日新聞出版
「自転車生活の愉しみ」朝日新聞出版
「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
「自転車とろろん銭湯記」ハヤカワ文庫
いずれも好評発売中。ネット内でのご注文はこちらにどうぞ。
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