本気で言う、地震のときは自転車で逃げろ!の990号

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     本気で言う、地震のときは自転車で逃げろ!の990号

■ウクライナ支援朗読会(あさって!)

 朗読家および「自転車つうりん子」として有名な沼尾ひろ子さんが、ウクライナ緊急チャリティ8時間耐久朗読会を開きます。
 リモート参加OK。
 3/20(日 )1000~1800です。
 私はその日なぜか京都にいますが、どこからか聞きに入る予定です。ぜひよろ。
 参加費はひとり500円。ウクライナ大使館に全額寄付されます。

【こちらからどうぞ↓】
https://www.hirokonumao.com/event-details/kinkyukokuchi-ukurainakinkyucharitihachijikantaikyurodoku-sangatsunizeronichikaisai?fbclid=IwAR3aB3v0HeNPLIcipGuo9s3QoyntSA2_H47RhXdxR89daOeQfd-S4lv5wVY

 さて、以下の文章は昨年秋に書いた話です。
 一昨日の地震でも、また分かりましたけど震度6強で街はそこまで壊れません。問題はその後やってくる水か火です。いえ、はっきり言い切りますが津波です。
 今回は来ませんでしたが、次は来ないと誰が言い切れますか。
 我々はどうすべきか。とりあえず「クルマで逃げないこと」ここに尽きるのです。

■地震がマジ多いじゃないか

 どうなってるんだよ、このところ地震がマジ多いじゃないか。いよいよ来るのか南海トラフ巨大地震、いや、首都直下地震、いや、首都圏に限らない活断層型猛烈地震……。
 もう地震列島ニッポンだから、どこで何が起きてもおかしくない。私はこの30年以上というもの、阪神淡路そして東日本をはじめとして、ジャーナリストとして地震の状況を見てきた。
 色々な種類の涙を見た。
 身近で大切な人が亡くなる、という不幸もさることながら、いろんなものが失われる、生活の基盤がなくなる、信じていたものが信じられなくなる、当たり前の日常が当たり前でなくなる……、取材してても毎日憂鬱なんだ。当事者だったら、その悲しみはいかばかりか、と思う。
 自分の人生の中で、もう地震はたくさん。二度と来て欲しくない。
 と、思うけど、来るね。次の大きいのが。色々な可能性のなかでも巨大プレート型地震「南海トラフがらみ」は必ず来るだろう。そして間違いなく巨大津波が押し寄せる。
 私の故郷である宮崎県なども現在14メートルの津波が予想されている(内閣府中央防災対策会議による)。そのときいったい何が起きるのか……(涙)。

■プレート型で町はそこまで壊れない

 我々現代人にとっての「元祖・巨大地震」は、大正12年の関東大震災。都市型の地震だろう。じつはこれもプレート型で、熱海あたりには津波も襲っていた。
 死者・行方不明者は10万5385人を数え、もちろん日本災害史に残る最大級の自然災害である。
 で、だ。先日ワケあって関東大震災時の東京のモノクロ映像をザーッと生素材(編集前フィルム)で見る機会があった。
 地震が起きてから、およそ3日間、さまざまな人がさまざまな場所で8mmあるいは16mmを回した記録だ。
 で、私はそれを見て驚いた。
 おかしいな、そんなに壊れてないのだ。
 カメラが回っている地域は銀座、浅草、上野、深川とさまざまだが、木造家屋、洋風建築をとわず、地震が起きた直後映像では、そこまで家屋は崩壊してない。
 屋根瓦が滑り落ちているものや、なぎ倒された塀、壁のひび割れから中の木枠が見えている、など被害はもちろんあるんだけれど、我々が「関東大震災!」で想像するような、一面ガレキの山、焼け野原、みたいな様子はない。呆然と道を歩く人々も「おー、恐かったなぁ」という感じで、どこかぼんやりしている。
 少なくとも震災直後の映像では。
 ところが刻一刻とそれが変化していくわけだ。遠くに煙の筋が立ち、重そうなリュックを担ぐ人などが増えてくる。大八車に家具を載せて運ぶ人が出てくると、火の手がもうそこまで来ているという兆しだ。そして火事がやってくる。
 隅田川沿いの各所の映像は、1日目の終わりから火事だらけになり、特に本所の被服廠跡(現在は「横網町公園」となり慰霊施設がある)では火事が火災旋風となって、3万5000人もの避難者ほぼ全員が犠牲となった。関東大震災の被害は、こうした悲惨事例を含め、ほとんどが火災なのだ。死因の大多数は焼死。
 つまり地震の直接被害というより、その後の火が恐かった。

■東日本もじつは同様

 関東大震災と被害の構図が(ある意味)似ているのが、じつは東日本大震災である。
 石巻、陸前高田、南三陸などと、津波が来る直前の町並みがVTRで残っているのを、誰もがテレビで見たことがあると思う。津波前の姿だ。
 壊れてるだろうか。いや、そうでもない。あれほど強い地震であったにも関わらず地震そのものの被害はそう多くは見えない。多くの町で電気だって通じてる。
 日本の建築物はかなりのレベルで地震に強い。これは事実だ。
 ところが、その後の津波で町が失われる。たくさんのビデオが今なおそれを物語っている。地震から津波襲来まで平均約40分。そのタイムラグに何をしていたかが生死を分けた。だからこそ、東日本大震災の2万人にも迫る死者の多くは「死因・溺死」なのだ。
 関東大震災と構図が似ている。つまり地震の直接被害というより、その後の水が恐かった。

■ふたつの地震から学ぶ「自転車避難」

 関東大震災と東日本大震災、この2つについて言えるのは(阪神淡路は後述)両者とも「もしかして逃げられた可能性はあった?」という部分だろう。
 地震と火事、地震と津波、要するに地震が起きて、その後の致命的な災害が襲うまでには、タイムラグがある。
 地震そのものは予知もできないし、逃げることもできない。しかし、これらのプレート型地震で地震で直接死ぬ人は少なかったのだ。そういう意味では「震災被害からは逃げられる」。
 では、そうやって?
 そこで俎上に上がるのが、自転車なのである。考えてみよう。
 ことが火であれ、水であれ、猶予時間は10分か20分か、あるいはそれ以上か。いずれにせよ徒歩だと疲れてしまうし間に合わない、しかし、クルマを使うと渋滞が起きてしまって列が進まなくなってしまうのだ。
 東日本大震災の際に多くの人がクルマで逃げ、クルマごと津波に飲み込まれ、そのまま帰らぬ人となった。
 津波避難渋滞の悲劇的なところは、列の前の人が「もうこれはヤバい」とクルマを捨てて逃げ出したとき、その後の列の人にとって、その渋滞は二度と動き出さない絶望的な列になってしまうことだ。
 だから自転車で。
 電動アシストならなおいい。
 スピーディに逃げられて、渋滞を決して起こさない。私はこのアイディアの元に(株)構造計画研究所とともにコンピュータシミュレーションを行った。結果は最高だった。クルマと徒歩と自転車を最適比率に設定するなら、避難完了率(つまり生存率)はおよそ3倍まで高まる。
 私はこのシミュレーションを土木学会で発表し、論文化した。読みたい人はこのページを。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejsp/76/1/76_1/_article/-char/ja/

 ここで間違ってもらっては困るのが、自転車避難というのは「全員自転車で避難!」を指しているのではないということだ。
 自転車で逃げられない人はたくさんいる。たとえば乳幼児、お年寄り、障碍者、病人、妊婦、ほか。
 こうした人はクルマだろう。というより、そういう人のために「クルマ避難」という選択肢はある。
 自転車避難の有意義なところは、自転車で逃げることで、その分、クルマが減り、渋滞発生率が減ることだ。
 渋滞発生率が減ると、クルマ避難の避難完了率が上がる。
 自転車で逃げるというのは、自転車に乗った人自身が助かるということもあるが、渋滞を緩和させ、クルマ避難の人を助けるという側面を持つ。
 自助と共助が、ものすごく高いレベルで共存する奇跡的な例。それが自転車避難なのである。。

■地震後にも有用

 では阪神淡路のような直下型地震の場合はどうか。この場合、災害から逃げるために自転車は役立たない。
 あの震災では、最初の地震の直接被害で人が死んだ。だから死因の大多数は「圧死」だった。自転車にはそこの部分に関わることはできない。
 ところが、自転車はその後、役立つのである。数々の避難所に支援物資を運ぶために。
 道はガレキでふさがっている。クルマやリヤカーはほぼ動けない。しかし自転車ならば、よいしょと頑張れば自転車ごと抱えられるし、細い隙間をぬって走れる。スピードも速い。機動力は最高で、それぞれの避難所にふさわしい物資をきめ細やかに運ぶことができる。
 これは自転車の大いなるアドバンテージで、阪神淡路で自転車は大活躍したのだ。
 要するにどのタイプの地震であっても自転車は大いに役立つ。国や自治体は災害避難計画に今すぐ自転車を組み込むべきだろう。
(初出:月刊「CYCLE SPORTS」疋田智の自転車よもやま社会学 2021年12月号)


【ヒキタ関連Kindle本】
「津波から自転車で逃げられるか」疋田智著・NPO自転車活用推進研究会編集
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「自転車“道交法”BOOK」小林成基(NPO自活研)と共著 こやまけいこ:イラスト 木世(えい)出版社
「だって、自転車しかないじゃない」朝日文庫
「おやこで自転車 はじめてブック」疋田智監修 ぼちぼち自転車くらぶ著 子どもの未来社
「明るい自転車質問室」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「自転車 困った時の即効お助けマニュアル」成美堂出版
「自転車ツーキニストの作法」SoftBank新書
「ものぐさ自転車の悦楽」マガジンハウス
「自転車会議!」(片山右京・勝間和代・今中大介・谷垣禎一と共著)PHP研究所
「自転車の安全鉄則」朝日新書
「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
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「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」朝日新聞出版
「自転車生活の愉しみ」朝日新聞出版
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