ユーミンは昔も今も“同種の”天才の921号

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      ユーミンは昔も今も“同種の”天才の921号

■ユーミンが「リッチになったから駄目になった」って?

 とある大学のセンセイが「(ユーミンは)荒井由実のまま夭折すべきだったね。本当に、醜態をさらすより、早く死んだ方がいいと思いますよ。ご本人の名誉のために。」なんてFacebookに書き込んだもんで炎上した! ……という騒ぎがありまして、まあ、ご承知の方はご承知と思うけど、アホなこと書いたもんだ(笑)。
 松任谷由実さん本人が「(旧知の)安倍総理の辞任会見を見てて泣いちゃった」とラジオ番組でしゃべったから、その反応として書いたそうな。安倍さんと親しげだと「死んだ方がいい」になるらしい。ユーミンもいいツラの皮。こりゃもう参った参ったとしか言いようがないが、まあ、本人、少しは反省してるという。
 だから匿名。
 ただ、騒ぎの後、あれまーと思ったのが、どうやらセンセイ本人とその取り巻きが、次のような認識を持ってたところでね。
「ユーミンは昔は天才だったが、売れて金持ちになったから駄目になった」
 ……。
 まったく違うな。そもそもの認識からして180度違う。

■ユーミンは「私はプチブル!」だったからスゴかった

 このセンセイも取り巻きの方々も、本気でご存じないのかどうか、ユーミンという人は72年にデビューしてからというもの、ずっとビンボくさい「四畳半フォーク」や、「反体制フォークゲリラ」を嫌悪してたのですよ。
 こう言い放ったもんだ。「四畳半フォークなんて大っ嫌い! 私はプチブル!」
 たとえば当時大ヒットし、多くの共感を得ていた南こうせつ『神田川』(73年)についてだ。
 三畳一間の小さな下宿に同棲して、銭湯に通って、小さな石鹸カタカタ鳴って……という価値観に、彼女は真っ向からNO!といった。そのアンチテーゼこそが75年の『ルージュの伝言』なわけ。軽快なリズムにのって「バスルームにルージュの伝言」を残すのですよ。
 銭湯に対して、自宅マンション(たぶん)のバスルーム!
 24色のクレパスでちまちま描いた似顔絵に対して、ルージュで鏡に書きなぐったダーリンへの伝言!
 その小粋さ、オシャレさ、カラッとしたリッチでアメリカンな感じは、70年安保的なテイストと真逆のもので(そりゃそうだ、70年安保は「反米」なんだから)、むしろあの当時としては勇気の要る世界観の開示(後述)だった。
 そこが天才だったんだよ。彼女は。
 類い希なメロディメーカーとしての才能はもちろんとして、「まわりはどうあれ、自分の価値観を信じる力」の強さ。「未来のお洒落」をはるか前から捕まえ、10年も経ってようやく時代の方が追いついてくる。
 たとえばこれまた荒井由実時代の名曲『中央フリーウェイ』だってそうだ。中央フリーウェイに見立てた中央道。そりゃもちろんホントはフリーウェイじゃないさ、片側2車線しかないし、都心から八王子まで渋滞渋滞だし、ビール工場の向こうはまだ畑と分譲地(空き地)だらけだった(笑)。でもそこにLAあたりのフリーウェイを見立て、彼のクルマに乗って流星みたいに疾走するのが彼女であって、そこが素敵!だったわけですよ。
 そのあたりを理解していないところに私は唖然とする。
 そんなの彼女の歌を聴いてれば(荒井時代も松任谷時代も)誰にとっても自明でしょうに。

■当時はむしろ勇気がいった

 70年代の雰囲気、あの頃の若者の「トレンド」から言うなら、それはむしろ勇気がいった話なんだ。
 だって、そんなプチブルな連中は、打倒されるべき「反革命な(笑)存在」なんだし、運が悪いと「ソーカツ」されてたよ。少なくとも「ジコヒハン」の対象ではあったよな。
 そのユーミンを「金持ちになったから駄目になった」なんて(笑)。あーた(笑)。彼女は最初からなにも変わってないんですが(笑)いったい何をお聴きになってたんでしょうか(笑)。その「変わる前の彼女」とやらの、どこに天才性をお認めになってたんでしょうか(笑)。

 ……でも、まあね。
 そういう感性の鈍さ、価値観の違いなどは、不問に付すべきだと思うわけ。鈍さも価値観も人それぞれだから。
 どんなに知性が足りなくったって、それもそれでひとつの個性、そういう多様性を認めることこそが良き社会の基本だと思ってる。
 ところがね、自分と違う価値観があるってことを一切認めず、勝手に「ユーミン像」を作り上げ、駄目になった駄目になったと勝手に嘆いてるヤカラがいるわけさ。そのヤカラども、あろうことか、駄目になったから「早く死んだ方がいい」っていうヤヴァさなわけ。
 ああ気味が悪い(笑)。

■「バブルの女王」というよりも

 ついでに言っとくと、バブルのスタートが概ね86年。72年のデビューから数えて10年以上、彼女は孤高のアーティストだった。その彼女に、時代がようやく追いついた。
 だから「バブルの女王」になったんだよね、彼女は。
 でも本当は「バブルの女王」じゃない。72年からこっち、彼女は「王女」であり、86年から「女王」になった。「○○の」は必要ない。私に言わせると、70年以降の20世紀日本のミュージックシーンは、極端にいうと「ユーミンとそれ以外」でできてると思う。


【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】

『人は話し方が9割』永松茂久著 すばる舎

 ふーむ、以前『人は見た目が9割』ってのがあったなぁ…。ちょっと待て、話し方が9割で、見た目が9割なら、ぐおらー、足すと10割をはるかに超えとるやないけー、なんて怒ってはいかんです。著者が違うのですから(←当たり前)。
 ただ、読んでみて驚いたんだけど、本書は「話し方」の本じゃない。「聴き方」の本だ。
 いかにして、相手をうまく話させ、その内容をくみ取り、結局コミュニケーション能力を高めることができるか、その目的のために本書は書かれた。しかも、その相手は、家族や友人、会社の同僚、上司などを指している。要するに身近な人とのコミュニケーションを円滑にするためのものなのだ。
 実践的でタメになるのは「拡張話法」と呼ぶ話し方、いや、聴き方だった。
「感嘆、反復、共感、賞賛、質問」の順番で身を乗り出して聴き、相手を「おお分かってる」と思わせながら、気分をよくし、相手の話を拡げていく、というものだ。
 その逆に、NGの相づちが4つある。
「でも」「だって」「どうせ」「ダメ」。
 こういう否定的なワードは話の腰を折るばかりで、不快なだけでなく、内容が深化していかない。
 ……ふーむ、なるほど。たしかにその通り。その通りで、全体としてもタメになるんだが、こりゃタイトルが違うなぁ。これ『人は聴き方が9割』とすべきじゃなかったのかね。
 少なくとも「これから○○について講演だ、プレゼンだ、おれ、話が苦手だから、この本でも読んでみるか」というようなニーズには100%合わないので注意。


【ヒキタ関連Kindle本】
「平成バブル物語 ~60年代生まれのための東京バブストーリー~」(田崎仁志著)
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GWRJPZH/
「津波から自転車で逃げられるか」疋田智著・NPO自転車活用推進研究会編集
https://www.amazon.co.jp/dp/B07JCXPGGL

【ヒキタ最新刊】
「新・自転車“道交法”BOOK」自転車活用推進法が分かる! 木世(えい)出版社
https://www.amazon.co.jp/dp/4777946207
「電動アシスト自転車を使いつくす本」東京書籍
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【好評既刊本】
「自転車“道交法”BOOK」小林成基(NPO自活研)と共著 こやまけいこ:イラスト 木世(えい)出版社
「だって、自転車しかないじゃない」朝日文庫
「おやこで自転車 はじめてブック」疋田智監修 ぼちぼち自転車くらぶ著 子どもの未来社
「明るい自転車質問室」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「自転車 困った時の即効お助けマニュアル」成美堂出版
「自転車ツーキニストの作法」SoftBank新書
「ものぐさ自転車の悦楽」マガジンハウス
「自転車会議!」(片山右京・勝間和代・今中大介・谷垣禎一と共著)PHP研究所
「自転車の安全鉄則」朝日新書
「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
「ロードバイクで歴史旅」木世(えい)出版社
「自転車をめぐる冒険」「同・誘惑」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」朝日新聞出版
「自転車生活の愉しみ」朝日新聞出版
「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
「自転車とろろん銭湯記」ハヤカワ文庫
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