眉毛の太さに考える905号
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眉毛の太さに考える905号
■ひきこもりのGW最終日
いやまあ、こんなスペシャルなGWは生まれて初めてでありましたね。
どうですか、ひきこもってましたか。ひきこもってましたね。
とはいっても、別に今も緊急事態宣言が解除されたわけでなし、相変わらず街に出るわけでなく、皆で集まるわけでもない「ひきこもり“気味”」の生活なわけです。
言うなれば、GWひきこもりだったのが、GW明けはニートに変わるという程度。
さようならひきこもりの日々よ、今日からニートです。
どうだろう、批判されてばかりの政府、こんなキャッチフレーズは。
はい、サイテーですね(笑)。
■そういうわけで昔のマンガに
引きこもって、パソコンの画面三昧という方も多かったかと思うのですが、これを機会にと、マンガをイッキ読み、という方々もいらっしゃったと思うのですよ。
まあいっぱいあるからね、そういうアプリが。しかも各社「ここぞ顧客の取り込みどころ!」と思ってるから、最初だけ無料、1巻だけタダ、とか、色々キャンペーンやってる。
私は自宅の本の整理とかをしてて、何だかんだでチラチラと読んでた。
『細野不二彦短編集』うーん、読ませるねぇ。『めしばな刑事タチバナ』うーん、ネタによって面白さの上下あるけど平均値は高い。『巨人の星』くー、あまりの懐かしさとぐいぐいくる面白さに、どこから入っても読み込んでしまう。『そしてぼくは外道マンになる』よくこんなマンガが集英社から出たもんだなぁ……。
とかね。
あと、子供と一緒に『鬼滅の刃』とかも見てた。これはアニメ。これは私よりもむしろカミさんがハマった。昨今はキッチン仕事をしながら『鬼滅ラジヲ』とかいってスマホで鬼滅声優の音声を流してるんだから、もうこれはオタクの入口であります。鬼滅ヲタ(笑)。
子供たち(小6、小4,小1)にとってはこのところ『鬼滅』と『ワンピース』が二本柱だ。ホント彼らは炭次郎とルフィが好きね。
…で、私は気づいたんだが、パパの時代のマンガと、今のマンガの圧倒的な差は何か。
眉毛の太さだ。
■ひと目で分かる昭和の少年マンガの絵柄
ワタシクは前々から不思議なんだけど、昭和のマンガって、なんでこんなに眉毛が太かったんだろ。どれが? ってどれでもですよ。ほぼ全部。飛雄馬も、万吉(男一匹ガキ大将)も、空手バカも、はだしのゲンにいたるまで、何から何までみんなそう。飯森広一『ぼくの動物園日記』みたいな実録ヒューマン動物マンガなんかだって、極太眉毛だ。
あきらかに異形だよ。現実に、こんな人はいないって。
ところが、マンガの中ではスタンダード。不思議。でも、あの時代(60年代〜80年代半ば)に少年時代を過ごした人にとっては、あんな異常な眉毛の主人公たちでも、なんら違和感を感じない。
この時代でいうなら、少女マンガのキラキラおめめがあってね、こちらはようやく異形だと脳が感じるようになった。これは分かっていただけると思う。だが、太眉はまだ脳がそう感じん。いまだ中年脳、騙され中。
でも、案外、今の子たちが、この時代のマンガを読むと「わー、眉毛太てー(笑)」と思うのかもしれん。
なぜなら炭次郎(『鬼滅の刃』の主人公)たちの眉毛は細いから。
■いつから変化したんだろう
じつは注意してると分かるけど『鬼滅の刃』の登場人物たちはみんな眉が細いわけだ。
そればかりか『ワンピース』だって細いぞ。ルフィなんて線だぞ。
おや、と思って調べてみた。すると…、ふーむ、そうだったか。意外や『ジョジョ』ですら細い。太そうなイメージなのに。
ついでに言うとケンシロウ(たち)もそこまで太くない。イメージでいうと、それこそ極太なんだが、実物を見ると、そうでもないわけだ。飛雄馬の半分程度の幅しかない。ひゃっはー、ひでぶ。
『北斗の拳』が大まかなところ80年代半ば。あのあたりが分岐点だったのか。…そういや、あの時代に『おぼっちゃまくん』(86年-94年)や『つるピカハゲ丸』(85年-95年)が出て、太い眉毛の主人公が一種の「熱血パロディ」的に扱われるようになった。
ギャグマンガの主人公たちが太眉。あのあたりが太眉時代の終焉なのかもしれん。
■元祖はどこに?
では、最初に太眉を描き始めた作家は誰か。
我々の世代が、実際に読んで憶えているところでは、貝塚ひろしあたりが限界だと思うのだ。彼の眉は明らかに太かった。若者もじいさんも「かわいい子供」すら太い。のべつ幕なしに太い。あたかも毛筆書き初めの一本横線のようだ。
貝塚ひろし…、懐かしいでしょ。ああいう絵柄の元祖だったよなぁ。正統派の後継者に『サイクル野郎』『夕焼け番長』の庄司としおあり。当然眉も太い。
貝塚でいうなら、そうだなぁ、戦争マンガが多かったよなぁ。60年代の少年マンガなんてまだまだ「特攻隊マンガ」が普通にあったわけだ。一見「反戦マンガ」を装う「戦争(感動)マンガ」。……時代だ。
一方、巨匠・手塚治虫は別に眉毛にコダワリはなさそうだった。
太眉…。
つらつらその理由を考えるに、たしかにね、熱血マンガやスポ根マンガが大流行りの中、太眉こそが「主人公の意志の強さを表す」とか「真っ直ぐの性格を表す」みたいなことはあったと思う。
ライバルは細かったからね、少なくとも主人公よりは。飛雄馬に対する花形のように。
または主人公の熱血に対して、サブ主人公の冷静、みたいな対比もあったと思う。たとえば主人公のアカレンジャーは熱血で眉の太いイメージ、ナンバー2のアオレンジャーは冷静で眉は細い、そういうイメージね。
■水島新司が何らかのメッセージを?
あれらの眉毛はいったい何だったんだろうか。
ヒントというべきか、あの時代まっただかなかの『ドカベン』に、私は何かを見るのであります。
ドカベンだって太眉なんすよ。主人公の山田太郎は明らかに太眉で、その眉毛は目よりも存在感がある。
ただ、それ以外の登場人物たちは、いずれも帽子のつばで隠すか、長い髪で隠すかして、眉を見せないのだ。これ、コミックスを読み返してみると分かります。山田太郎だって、しょっちゅう帽子で眉を隠してる。んで、土井垣やら影山(クリーンハイスクール)らの「眉なしキャラクター」すら登場する。いや、頻出する。
だいたい同じ作家による『あぶさん』なんて主人公からして眉なしだ。
水島新司は、明らかに「太眉の時代」に違和感を持っていた。そして、自分のキャラクターにあえて眉を描かないことにコダワリを持っていたんだと思う。
「時代の趨勢としては太眉、そりゃ分かってる。だが、そこにそのまま乗りたくはない」
その理由が何だったのかは分からないんだけど。
【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】
『マンガうんちくラーメン』河合単著 KADOKAWA
もはやマンガのジャンルとして定着した感のある「うんちくマンガ」そして「グルメマンガ」。
その2ジャンルが融合することは割合よくあるわけだが、その融合の行き着く先、いや行き着く極北がこのマンガだ。
トレンチコートを着た主人公(泉昌之「かっこいいスキヤキ」を彷彿とさせる)が、とにかくラーメンに関するうんちくを語り続ける。ストーリーなんてほぼない。そういうマンガ。
もちろんトレンチコート野郎はラーメンに詳しい。「半チャンラーメンの半チャンは『半分チャーハン』ではなく麻雀の半荘(ハンチャン)だ」だの「コショウの香りがラーメンの肉や油の臭みを消すのは主成分リモネンによる」だののうんちく中のうんちくを語りたおす。
だが、主人公がそれを語る必然など、ほとんどない。しいて言うなら「主人公がうんちく語り好きだから」。だから、ページをめくってもめくっても吹きだしだらけ。つまり活字だらけ。マンガであることの意味があまりない。よく分からない(笑)。
作者の河合単さんは、ラーメンマンガの巨匠であり、『ラーメン発見伝』を描いた人だ。
おそらく『発見伝』で語りきれないうんちくのストレスを、このマンガで爆発させたんだろう。
【ヒキタ関連Kindle本】
「平成バブル物語 ~60年代生まれのための東京バブストーリー~」(田崎仁志著)
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GWRJPZH/
「津波から自転車で逃げられるか」疋田智著・NPO自転車活用推進研究会編集
https://www.amazon.co.jp/dp/B07JCXPGGL
【ヒキタ最新刊】
「新・自転車“道交法”BOOK」自転車活用推進法が分かる! 木世(えい)出版社
https://www.amazon.co.jp/dp/4777946207
「電動アシスト自転車を使いつくす本」東京書籍
https://www.amazon.co.jp/dp/4487809878
【好評既刊本】
「自転車“道交法”BOOK」小林成基(NPO自活研)と共著 こやまけいこ:イラスト 木世(えい)出版社
「だって、自転車しかないじゃない」朝日文庫
「おやこで自転車 はじめてブック」疋田智監修 ぼちぼち自転車くらぶ著 子どもの未来社
「明るい自転車質問室」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「自転車 困った時の即効お助けマニュアル」成美堂出版
「自転車ツーキニストの作法」SoftBank新書
「ものぐさ自転車の悦楽」マガジンハウス
「自転車会議!」(片山右京・勝間和代・今中大介・谷垣禎一と共著)PHP研究所
「自転車の安全鉄則」朝日新書
「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
「ロードバイクで歴史旅」木世(えい)出版社
「自転車をめぐる冒険」「同・誘惑」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」朝日新聞出版
「自転車生活の愉しみ」朝日新聞出版
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